東京の展示会からChatGPTの話が消えていた。AI World 2026で見た岩手との「1年差」

視察レポート2026.07.24

東京の展示会からChatGPTの話が消えていた。AI World 2026で見た岩手との「1年差」

東京ではもう、ChatGPTの話をしていなかった。AI World 2026で見えた岩手との1年差(幕張メッセの展示会場と岩手・盛岡の街並みの対比)

3日間、幕張メッセを歩いて、ChatGPTの使い方の話を一度も聞きませんでした。

1年前まで、会場の主役だったのにです。

7月22日から24日まで開催されていた「AI World 2026 夏 東京」と「DX総合EXPO」に行ってきました。岩手・盛岡で法人向けのAI研修をしている私にとって、東京の展示会は定点観測の場です。今の最前線がどこにいて、岩手との距離がどれくらいあるのか。それを肌で確かめに行くわけです。

今回、その距離は思っていたより開いていました。正直に書きます。

会場からChatGPTとプロンプトの話が消えていた

1年前から半年前の展示会は、話題の中心がChatGPTの使い方でした。プロンプトはこう書きましょう、こんな業務に使えます、という話です。Claudeは「一応こういうのもありますよ」と紹介される程度の脇役でした。

今回、AI系のセッションを回って、その話は一切ありませんでした。

代わりに会場を埋めていたのは、GeminiやCopilotを全社導入するといった法人系の話か、Claude CodeやCodexといったAIエージェントの話ばかり。AIエージェントというのは、指示を出すと自分で手順を考えて、作業を最後まで進めてくれるAIのことです。

「AIに質問する」時代の話はもう終わっていて、みんな「AIに仕事を任せる」時代の話をしている。半年でここまで変わるのかというのが率直な感想でした。

東京の企業は「AIを使っていないことが怖い」と言い始めた

会場で話した都会の企業の方の言葉で、印象に残っているものがあります。

「使っていないことが、ピンチというか、危機に感じてきたんですよね」

だから今、AI推進のプロジェクトやAI推進部のような専門部署を作る会社がかなり増えているそうです。実際、会場を歩いている人たちも、そういう部署の担当者らしき人が目立ちました。上司に言われて仕方なく来たという顔ではなく、自社のどこに何を入れるか、本気で探しに来ている顔です。

もっと進んでいる会社になると、笑い話のようですが、社員がAIを使いすぎて会社から「トークン(AIの利用量)を使いすぎだ」と注意されるケースまであるそうです。

使うかどうか、ではもうない。どう使いこなすかで悩んでいる。それが東京の現在地でした。

岩手・盛岡の中小企業はまだ「そろそろ入れようか」の段階

帰りの新幹線で考えていたのは、当然、岩手のことです。

岩手・盛岡の企業の現在地はどうか。まだChatGPTを「チャッピー」と親しみを込めて呼びながら、画像生成やちょっとした調べ物に使っている。そういう方がほとんどだと思います。導入して満足している会社も、たまに見かけます。

使えるのはわかっている。でも周りも使っていないし。そう言って危機感を持っていない社長さんが、大半ではないでしょうか。

私の研修を受けて「これは使わないとまずい」と本気で感じてくれた企業もあります。ただ、岩手全体で見れば、そこまで思っている会社や経営層はまだ全然いない。それが正直な肌感覚です。

岩手の企業の多くは、今「そろそろAIを入れようか」と迷っている段階です。でもその議論、東京の会社は1年前に終えています。

東京の議論 どのAIを使うか。どの業務に組み込むか。AIエージェントをどう活かすか
岩手の議論 そろそろAIを入れようか、どうしようか

丸1年分の差。しかも相手は止まって待ってくれません。

AIの差は、今日の売上には出ない。だから怖い

厄介なのは、この差が今はほとんど見えないことです。

岩手にいて、AIを使っていなくても、今日の売上は下がりません。だから危機感が生まれない。

でも、AIの差は今日の売上には出ない代わりに、1年後の会社の形にはっきり出ます。

展示会からChatGPTの使い方の話が消えるまで、たった半年でした。このスピードで進む世界で1年の差を放置したら、追いつける差ではなくなる。私はそう思っています。

この差をいかに埋めるか。それが今、地方の会社にとって一番重要なポイントだと感じました。

地方の中小企業にこそチャンスがある理由

暗い話ばかりではありません。むしろ逆です。

地方の会社が戦う相手は、東京の最先端企業ではなく、同じ県内の競合です。そして県内の競合も、ほとんどがまだ「チャッピー使ってますよ」の段階にいる。

だとしたら、次のフェーズに一歩早く進んだ会社は、それだけで抜け出せます。東京で当たり前になったことを、県内でいち早くやる。それだけで差別化になる。周回遅れの地域だからこそ、先行者になるハードルが低いのです。

これは地方ならではのチャンスだと、会場を歩きながら本気で思いました。

AIは導入しただけでは何も変わらない

最後に、一番大事なことを書きます。

一定の社長さんたちは、AIを導入すれば勝手に効率化されると思っています。残念ながら、そんなことは起きません。

考えてみてください。社員さんが残業してまで、AIの使い方を自主的に覚えようとするでしょうか。ほとんどしないと思います。使い方もわからないままツールだけ渡されたら、「それなら今までのやり方でいい」となるのが自然です。導入したのに誰も使っていない、という一番もったいない状態がこうして生まれます。

必要なのは、会社が業務時間の中に学ぶ時間を取ってあげることです。研修で「こんな業務でもAIが使えるのか」と知ってもらい、「自分の業務ならここで使えそうだ」と本人が考えて、実際にやってみる。この流れを作れるかどうかが、導入の成否を分けます。

つまりこれは、ツールの話ではなくリスキリング(学び直し)の話です。AI導入の本体は、ソフトを契約することではなく、社員が使えるようになる時間への投資だと私は思います。

幕張メッセで見てきた東京との差は、確かに大きい。でも、埋められない差ではありません。周りより一歩早く動くこと。そして導入で終わらせず、人に投資すること。この2つができた地方の会社が、次のフェーズに抜け出していくはずです。

「チャッピー使ってますよ」の、その先へ。
次のフェーズに進む会社を、岩手から増やしたい。

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