岩手の生成AI業務利用率は全国36位|23.8%という現在地と、中小企業が今始めるべき理由

岩手×AI2026.07.31

岩手の生成AI業務利用率は全国36位|23.8%という現在地と、中小企業が今始めるべき理由

「岩手のAI活用は全国で何位なのか」。気になって検索した方に、先に答えをお伝えします。企業を対象にした都道府県別ランキングは公表されていません。ただし、働く人を対象にした推計なら存在します。岩手県の生成AI業務利用率は23.8%で、47都道府県中36位。東北6県では最下位です。

岩手でAIを使っている会社も人も、まだ少数派です。そしてそれは「遅れ」ではなく、今始める会社にとっての「チャンス」を意味します。この記事では、出典が確認できる公的な調査データだけを使って、岩手の現在地と、今始めるべき理由を解説します。

働く人ベースで、岩手は47都道府県中36位。東北最下位

タイトルの問いに一番近い答えを出しているのが、パーソル総合研究所の「生成AIとはたらき方に関する実態調査」です。全国の就業者19,855人を対象にした2025年10月の調査で、都道府県別の生成AI業務利用割合を推計しています。東北6県を並べるとこうなります。

宮城県 33.1%(全国5位相当)
福島県 32.4%(7位相当)
山形県 31.2%(11位相当)
秋田県 29.7%(15位相当)
青森県 24.2%(33位相当)
岩手県 23.8%(36位相当)
全国の就業者 32.4%

1位は東京の41.4%、最下位は福井の16.5%です。岩手は全国平均を8.6ポイント下回り、東北の中でも最下位。同じ東北でも、宮城や福島とはすでに10ポイント近い差がついています。

2つ注意があります。まず、この順位は調査の都道府県別推計値を降順に並べた当記事の独自集計です。そして都道府県別の数値は公的統計を組み合わせた簡易推計で、サンプル数が少ない県は誤差が大きいと調査自体が注記しています。順位は目安として見てください。それでも、岩手が全国でも後ろの方にいるという構図は変わりません。

そしてこれは「働く人」の数字です。「企業」としての導入はどうなのか。次で見ていきます。

企業ベースでは、東北の中小企業は28.5%

帝国データバンクの2026年3月調査によると、生成AIを業務で活用している企業の割合は次の通りです(東北の数値は同調査の東北版)。

全国全体 34.5%
全国の中小企業 32.4%
全国の小規模企業 28.0%
東北の中小企業 28.5%
東北の小規模企業 26.3%

東北の中小企業は28.5%で、全国の中小企業より3.9ポイント低い水準です。「地方」と「中小企業」という2つの条件が重なるほど、活用が進みにくいことが分かります。なお、この東北調査は県別の数値を公表していないため、ここから岩手県の順位は出せません。

岩手県単体では「活用している」が15.2%

では、岩手県だけを対象にした調査はどうでしょうか。

岩手銀行グループの「岩手県内企業景況調査(2025年10月調査)」では、生成AIを「活用している」と答えた県内企業は15.2%でした。県内335社を対象に、172社が回答した調査です。

ここで1つ注意があります。この15.2%と、先ほどの全国34.5%は、調査主体・対象・時期が異なる別々の調査です。単純に「岩手は全国の半分以下」と比較することはできません。それでも、県内で実際にAIを使っている会社が少数派であることは、この数字からはっきり読み取れます。

一方で、変化の兆しもあります。岩手日報(2026年5月7日)によると、東京商工リサーチ盛岡支店の調査では、AIの「活用を推進」する県内企業は23.1%へ上昇しているとのことです。少しずつですが、動き始めた会社が増えています。

使っている会社の86.7%は「効果が出ている」

「まだ様子見でいいのでは」と思った方に、見てほしい数字があります。

帝国データバンクの同じ調査では、生成AIを活用している企業のうち、86.7%が「業務への効果が出ている」と回答しています(東北版でも85.8%)。使い道の上位は、文章の作成・要約・校正が45.1%、情報収集が21.8%、企画のアイデア出しが11.0%。特別なことではなく、毎日の書き物と調べ物が中心です。

効果の中身も分かっています。IPA「DX動向2026」(国内1,799社調査)では、AI導入企業の効果は次の通りでした。

業務の効率化・迅速化 91.6%
企画提案の品質・速度向上 48.9%
残業時間の削減 29.2%
売上・利益の向上 3.9%

正直な数字です。AIはすぐに売上を増やす道具ではありません。今ある業務を速くして、人手を補う道具です。だからこそ、最初の目的は「売上アップ」ではなく「毎日の業務の時間を取り戻すこと」に置くのが正解です。そしてこれは、岩手の会社にとって他人事ではない話につながります。

今始めるべき最大の理由は、人手不足がもう来ていること

帝国データバンクの岩手県の調査(2025年4月)では、正社員の人手不足を感じている県内企業は55.7%。半分以上の会社が、すでに人が足りていません。

そしてこの状況は、これから確実に厳しくなります。2025年国勢調査の速報で、岩手県の人口は2020年から7.0%減少。秋田、青森に次いで全国で3番目に大きい減少率でした。さらに国立社会保障・人口問題研究所の推計では、2050年の岩手の人口は2020年の64.7%まで減る見通しです。約35%減。働き手はもっと減ります。

「AI担当を置ける余裕がない」という声はよく聞きます。ですが、実際は逆です。人手が足りない会社ほど、AIを入れたときの1人あたりの効果が大きくなります。AIは人を減らすための道具ではありません。今の人数のまま仕事を回すための道具です。10人の会社で1人分の事務作業が軽くなることは、100人の会社での1人分より、経営へのインパクトがずっと大きいはずです。

採用で人を増やすのが年々難しくなる岩手では、「今いる人の時間をどう取り戻すか」が経営の本丸になります。AIはそのための一番安い手段です。

止まる原因は、ツールの難しさではない

岩手・盛岡で研修や商談の場に立っていて、始めていない会社からよく聞く理由は2つです。「何に使えるかわからない」と「人がいない」。人がいない、への答えは先ほど書いた通りです。では「わからない」の中身は何でしょうか。

多くの場合、止まっている原因はツールの操作が難しいことではありません。ChatGPTもGemini(Googleの生成AI)も、操作自体は検索とほぼ変わりません。本当の原因は、「自分の会社の業務のどこに使えるか」が見えないことです。見積書の作成、日報のまとめ、問い合わせメールの返信。毎日の業務とAIが頭の中でつながらないから、最初の一歩が出ない。岩手で研修をしていて、一番多いのはこのパターンです。

もう1つ、正直に書いておきたい失敗パターンがあります。全員一律の研修を1回やって終わり、という形では定着しません。頭で分かっただけでは、翌週には元の仕事のやり方に戻ります。「自分の業務でAIを使えた」という体験を作れるかどうかが、定着の分かれ目です。

リスクの心配は5割。実際に起きたのは1%台

「情報漏洩が怖い」という声もよく聞きます。ここもデータで見てみます。帝国データバンクの同調査で、企業が挙げた活用の課題は、情報の正確性50.4%、専門人材・ノウハウ不足41.3%、活用すべき業務の範囲40.0%、情報漏洩リスク33.5%でした。

一方で、実際に機密情報や個人情報の流出が起きたという回答は0.7%、出力ミスによる損害・トラブルは1.3%です。心配している会社は3〜5割いるのに、実際に起きた会社は1%台。リスクは無視できませんが、正体は「怖いから禁止」で対処するものではなく、社外秘を入れないルールと、出力を確認する手順で管理するものです。

様子見の間に、差は開いていく

最後に、スピードの話です。パーソル総合研究所の続報調査によると、全国の正規雇用者の生成AI業務利用率は、2025年10月の41.9%から2026年5月には54.3%へ。半年で12.4ポイント上昇しました。

岩手県別の最新値はまだありません。ただ、全国が半年でこれだけ動くということは、様子見を続けている間にも格差は広がっていくということです。「周りが使い始めてから考える」は、岩手では一番損な選択になりつつあります。

東京の展示会を3日間歩いて、この差を肌で感じた話は、東京の展示会からChatGPTの話が消えていた。AI World 2026で見た岩手との「1年差」に書きました。数字ではなく現場の空気を知りたい方はこちらをどうぞ。

岩手の中小企業は、どう始めるべきか

ここまでの数字と実態を踏まえた、始め方の処方箋は3つです。

その1ツール選定から始めない。「ChatGPTとGeminiのどちらがいいか」から考え始めると止まります。先に決めるのは業務の方です。「毎日やっていて一番面倒な業務」を1つだけ選んでください。データが示す通り、文章作成と調べ物から始めるのが王道です。
その2全員一律より「1人×1業務」から。最初から全社展開を狙う必要はありません。まず1人が1つの業務で「これ使える」という体験をする。その1人が社内の見本になり、周りに自然と広がっていきます。
その3費用は助成金を確認してから判断する。研修費用は、国の人材開発支援助成金の対象になり得ます。要件を満たせば、費用の最大75%が助成対象です。費用の心配は、まず助成金の話を聞いてから判断することをおすすめします。

まとめ。36位は遅れではなく、チャンス

この記事のポイントを整理します。

現在地働く人の生成AI業務利用率は、岩手23.8%で47都道府県中36位相当・東北最下位(パーソル総合研究所の簡易推計・順位は当記事の独自集計)
企業東北の中小企業の活用は28.5%、岩手単体では「活用している」が15.2%(帝国データバンク・岩手銀行グループ)
効果使っている会社の86.7%は効果を実感。効果の中心は業務の効率化91.6%で、人手不足を補う道具(帝国データバンク・IPA)
リスク心配は3〜5割、実際に起きたのは1%台。禁止ではなくルールと確認手順で管理する
結論正社員不足55.7%・人口減少全国3番目の岩手でこそ、今の人数で仕事を回すためにAIを始める価値がある

岩手の36位という順位は、悲観する材料ではありません。今始めれば、県内では先頭集団に入れるという意味です。全国が半年で12ポイント動く世界で、全国平均に追いついてから始めるのと、少数派のうちに始めるのとでは、得られる差が違います。

県内の15.2%に入るのは、今が一番簡単。
「うちの業務のどこに使えるのか」から一緒に考えます。

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